お医者さんはシューフィッター 整形外科医との連携に必要なシューフィッターの知識 橋間 誠

●靴との関係

 ここまでは、靴と関係がないようですが、不良姿勢から始まる悲しいシナリオはまだ、続くのです。内股にして、膝を伸ばすと足底の外側の方に荷重がかかってきます。実際にご自身でしてみてください。大腿部の内転筋がしっかりしている人はいいんですが、ほとんどの人は、小児期から内股にしていると、膝がO 脚になってきます。O 脚になることで、さらに足底の外側荷重は悪化し、O 脚が進行するという悪循環が生じてきます。O 脚が進行すると膝関節の内側に荷重が集中し、内側の関節軟骨がつぶされ、変形性膝関節症となっていきます。こういう患者さまの靴の底を見ると、外側部分が著明に減っています。(図1)ここで整形外科医とシューフィッターの連携が必要となってきます。


図1 足底の外側荷重ですり減った靴底

 靴店にこのお客さまが来店されたらシューフィッターは靴のフィッティングを見るだけでなく、膝の内側の疼痛の有無、立位で踵をそろえた時の膝と膝のすきまの有無を確認し、アウターエッジ付きのインナーソールの必要性について説明し、整形外科受診を勧めていただきたいのです。当然、靴はインナーソールの入れ替えができるものを選んでください。

 足底の外側荷重によるO 脚が原因の変形性膝関節症の患者さまは、整形外科には毎日たくさん来院されます。日本の整形外科医は国際的に見て、一定時間内に多くの患者さまを診察することを強いられています。そのため、インナーソールや、靴のフィッティングまで説明が十分にできていないのが現状です。変
形性膝関節症の患者さまには、鎮痛剤、湿布、温熱療法、ヒアルロン酸の関節内注射で対応するのが精一杯となります。ただ、患者さまの膝関節痛が、足底の外側荷重が原因であるなら、診察時間が長くなっても、積極的にインナーソールや靴のフィッティングについて説明し、適切なシューフィッターへの連携を
行っていくことが重要であると思われます。

 私のクリニックはその点、恵まれており、私がインナーソールや靴の指導が必要と診断すると、義肢装具士、シューフィッターが靴外来を予約制で行ってくれているので、そこでインナーソールの作成と、靴のフィッティングをしてくれます。そして、医師にどういうインナーソールを作成したかを連絡してくれます。さらに数週間、靴を使用してからさらに、患者さまの足に疼痛がないか、靴の履き方に問題がないかをチェックしてくれています。

 O 脚が進行し、変形性膝関節症が悪化し、日常生活が困難となると人工関節の手術を行います。すり減った軟骨の部分を薄く切り取り、金属をかぶせて固定し、その間にクッションを挿入します。骨を切り取る際、O 脚の補正をするため、まっすぐのきれいな足になり、痛みも軽減し、日常生活が再び可能となります。しかし、手術になる前に、姿勢を矯正するフィットネス、インナーソールの使用、靴選びの知識がもっと世の中に広まり、発展することを願っています。

橋間 誠(はしま まこと)

医療法人橋間診療所理事長・院長(http://www.move-like-flowing.com/
メディカルフィットネススタジオムーヴ・ライク・フローイング施設長
日本整形外科学会認定医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本医師会健康スポーツ医
ネバダ州立大学公認 ピラティスインストラクター
・1966 年 生まれ
・1991 年 近畿大学医学部卒業
・1997 年 医学博士号取得
・2007 年 医療法人橋間診療所理事長・院長に就任
・2010 年 FHA シューフィッタープライマリーコース認定取得

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