お医者さんはシューフィッター 整形外科医との連携に必要なシューフィッターの知識 橋間 誠

●患者さまにしてあげたい事

 私のクリニックに併設しているフィットネススタジオでは、姿勢診断システムとして頭部、脊椎、骨盤、さらに足先を含めた縦に長い特殊なレントゲンを定期的に撮影しています。(図1)これにより、将来の老化像が予想できるだけでなく、姿勢の老化がどこから始まっているのかがわかります。

姿勢分析のための特殊レントゲン

 医学の進歩は様々な分野で広がり、中でも、整形外科的な手術の進歩は目を見張るものがあります。一部の特殊技術を持つ職人的な医師にしかできなかった人工関節の手術も、よりマニュアル化し、今では全国の総合病院できわめて成績の良い手術が受けられ、今まで寝たきりとなっていったはずの多くの患者さんたちが再び歩ける人生を手に入れることが可能となっています。

 しかし、手術を受ける前に、トレーニングや靴で科学的に確実に変形を予防できる時代が来るとしたらどうでしょう。皆さんは手術を受けながら人生を送ることを選択されるでしょうか。

 その姿勢の老化を止めるには、食事、運動療法、予防的な内服治療、そして適切な靴が必要となります。どれも欠かすことができないため、医師は、優秀なトレーナーとシューフィッターとの連携がなければ、適切な治療はできません。(図2)

よりクオリティーの高いものをめざすなら

 医師は靴を外出時の履物であるという考えを捨て、将来の変形を止める治療のアイテムと認識していくことが必要です。また、機能面だけでなく、より快適でファッショナブルで、多くの方に選んでいただける靴の開発が求められるでしょう。

 特に、医学的なバイオメカニクスの知識を持つシューフィッターの育成が今後の大きな課題と思われます。私たちは、今後、定期的なワークショップを開催し、ひとりでも多くのシューフィッターが予防医学を担う一員として活躍できるよう、教育の場を提供していきたいと思います。

 私はシューフィッターの資格を持つ日本で初めての医師となりました。そして、シューフィッターの資格をとったおかげで、私は、日々の医療現場に役立つ多くの知識を得ることができました。シューフィッターは、靴販売のスタッフとして働くことだけにとどまらず、優秀な理学療法士やトレーナーを目指すべきと思います。また、言い換えれば、医師、理学療法士、トレーナーは、シューフィッターの研修を受けることで各専門分野の知識の幅を格段に広げることができるでしょう。

 全国の医療現場やフィットネススタジオにシューフィッターが充足し、多くの方の脊椎、関節の老化を予防できる時代が来ることを信じています。

 患者さまに最高の治療を提供し、一人でも多くの方が手術をうけず、痛みのない快適な一生を過ごせるよう、これからも努力してまいります。

ホノルルマラソンスタート地点にて

橋間 誠(はしま まこと)

医療法人橋間診療所理事長・院長(http://www.move-like-flowing.com/
メディカルフィットネススタジオムーヴ・ライク・フローイング施設長
日本整形外科学会認定医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本医師会健康スポーツ医
ネバダ州立大学公認 ピラティスインストラクター
・1966 年 生まれ
・1991 年 近畿大学医学部卒業
・1997 年 医学博士号取得
・2007 年 医療法人橋間診療所理事長・院長に就任
・2010 年 FHA シューフィッタープライマリーコース認定取得

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