靴のクレームの実例と品質性能値 靴甲材料に関わるクレーム その15 東京都皮革技術センター 台東支所 中島 健

●靴甲材料に関わるクレーム その15

10)ファスナーや面ファスナーの破壊
 ファスナーは胴の細いブーツには欠かせない部品です。事故の多くは足首付近の胴にたるみがでて、ファスナーが飛出し、反対側の靴と擦りあわされて壊れました。写真14 はその事例です。ISO にも新しく試験方法は数種類が提案されていますが、この擦り合わせるような現象を想定した試験はありません。

写真14 ファスナーの破損

 また、ハーフブーツなどで開け閉めするスライダーが歩行の振動で滑り落ちてファスナーが開いてしまうクレームもあります。スライダーはしっかり倒しておけば滑り止めの爪が引っかかり動かない構造になっています。

 この機能が機能しない加工になっていたことが原因です。図2 はスライダーのロック強度を調べる方法です。

図2 スラーダーロック強度試験


 面ファスナーは簡単に着脱できることから子供靴や医療関係の靴では欠かせない締め具です。構造は簡単な引っ掛ける釣り針状のフック面と受けるループ面で出来ています。その耐久性や密着強度が無頓着に扱われていますが写真15 のように比較的長く使用された後でもクレームを寄せられることがあります。この面ファスナ- の性能もISO で決めています。

写真15 面ファスナーの不良

 性能は引っ張りに対する強さと引き剥がす力を図3 のように測定して評価します。繰返しの着脱に対する耐久性は、図のような上下の直径が異なるローラーに取り付けて回転させることで着脱が繰返し行なわれる。規定回数後の引き剥がし力の衰えを比較します。

 ISO では、剥離強さが0.1N/mm 以上あり、耐久性は60%以上を維持している事としている。取り扱いの靴のレベルはどのくらいかを知っておくべきです。

図3 図4スラーだーロック強度試験

(参考文献)
・ Definition Leather International May/2010

 

中島 健(なかじま けん)

・1939 年 東京都生まれ
・1962 年 スタンダード靴(株)入社
・1972 年 東京都立産業労働会館 技術指導研究員
・2000 年 東京都立皮革技術センター台東支所
      専門技術指導員
          現在に至る。

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