お医者さんはシューフィッター 整形外科医との連携に必要なシューフィッターの知識 橋間 誠

●姿勢の老化予防とピラティス

整形外科医をしていると、毎日レントゲンで患者さまの脊椎の形状を診る機会をたくさん持ちます。その時、多くの整形外科医が無意識に感じていることがあります。その一つが頸椎は胸椎とのつなぎ目、つまり下位頸椎に加齢的な変形が生じていることが多い、同様に、腰椎と骨盤とのつなぎ目、つまり下位腰椎にも加齢的な変形がよく生じています。

この特徴の理由を深く考えた経験がある整形外科医はあまりいません。これらの変形をよく生じている部位の共通点は、可動性のいい部位と可動性の悪い部位との境目であること、さらに、可動性のいい部位の中でもその境目に一番近い部位から骨の変形は生じています。

人の姿勢の老化を予防するには、下位頸椎、下位腰椎の変形を防げばいいのです。つまり、24本の肋骨で強固に囲まれた胸椎の可動性を良くすること、また、胸郭と骨盤で囲まれた、腹部のインナーマッスルを強化し、安定性を高めることです。

姿勢分析のための特殊レントゲン

私が姿勢を診るときは、この胸椎の可動性、腹部のインナーマッスルの安定性を注意深く診察します。胸椎の可動性は、深呼吸時の肋骨の動きと、上半身を反らした時の胸椎の伸展性などを観察します。腹部のインナーマッスルの安定性は、片脚起立時間、片脚起立時の体幹の側方傾斜の程度などで判断します。

これらを強化していくことで姿勢の老化を予防することができます。これらを総合的に指導していくのに最適なエクササイズのひとつがピラティスです。胸腹式呼吸は腹式呼吸に肋骨の動きを取り入れた呼吸方法です。ピラティスはすべてのエクササイズにこの呼吸方法を併用しているため、精神安定にも効果があります。腹部のインナーマッスルを鍛えるだけでなく、脊椎のひとつひとつの骨を柔軟に動かし、流れるような関節の動きの意識を高めていきます。老化予防にウォーキングと考えていた方は、胸腹式呼吸と、インナーマッスル強化を付け加えることを覚えておいてください。

橋間 誠(はしま まこと)

医療法人橋間診療所理事長・院長(http://www.move-like-flowing.com/
メディカルフィットネススタジオムーヴ・ライク・フローイング施設長
日本整形外科学会認定医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本医師会健康スポーツ医
ネバダ州立大学公認 ピラティスインストラクター
・1966 年 生まれ
・1991 年 近畿大学医学部卒業
・1997 年 医学博士号取得
・2007 年 医療法人橋間診療所理事長・院長に就任
・2010 年 FHA シューフィッタープライマリーコース認定取得

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